2005年7月10日
EVENT.47 (株) 小糸工業 代表取締役社長 森 健造氏インタビュー
お忙しい中お時間を割いていただき、インタビューをさせていだきました。

7月10日SPECは東戸塚にある小糸工業を訪ね、取締役社長である森健造氏とお話をさせていただきました。
慶應中等部入学後、慶應高校、慶応大学に進学。卒業後、米国に留学し半導体について研究。その後アメリカの企業に就職。帰国後小糸製作所を経て小糸工業へ。現小糸工業代表取締役社長
Q.学生時代から、今なさっている仕事をしよう、いずれは会社の人々をまとめる役割をつとめよう、と考えてらっしゃったのですか?
A.学生時代から人生の最終設計をしようというのはなかなか難しい。私は工学部の出身であるが、そのなかで当時はやはりエンジニアになろうと考えていた。それなりのエンジニアにはなりたいという気持ちを持って仕事をしながらも、その中でもっと上の立場でやってやろうという考えの延長線上に今の社長という立場につながっていると思う。
Q.これまでの経歴について詳しくお聞かせください。
A.大学では半導体に興味を持っていた。それで卒業すれば就職になるのだが、何か自分の特徴を出したいと思ったが、慶應の大学院に進んでもただの延長線上であまり面白くないなということで、どうせならアメリカに行こうと考えた。当時日本人は西海岸に固まっていた。それならむしろ東部が良いということでコネティカット州の大学を選んで、そこでも半導体の研究を行った。そしてアメリカの半導体の会社に就職することとなった。その後ICの品質管理のような仕事を行った。当時コンピューターも発達してコンピューターを使ったエバリュエーションもやった。このように自分の仕事がずっと継続できるわけではなく、時代時代によって変わるものである。結果的にアメリカで5年間働いた。その後、小糸製作所という会社がエレクトロニクスをやりたいということで技術者を集めていた。本当は長くアメリカにいるつもりだったが、そういう話があるのなら帰ろうということで帰国した。小糸製作所でハイブリッドIC の研究を行い、自分で製品を作って自分で売り込みに行ったりもした。その後小糸工業に移ることになった。もっと自分が役に立てるのではないかという思いからである。当時の小糸工業は良い研究をするのだが、なかなか利益に貢献しなかった。私は主力の電機事業部に配属され、会社が利益を上げるにはどうすればいいかという仕事を一生懸命にした。だから私はずっと技術者できていたが、事業というものについて考えるチャンスを与えられた。社員のモチベーションだとかお金をどこに投資したらいいのか、どういう人を配属したらいいか、これがマネジメントにつながっていくのである。私自身は電機事業部長という立場で相当経営というものを勉強し、非常に役立っている。大切なのは今やっている仕事をもっとよくしようと考えることと、自分には上司という者がいるわけで自分がもし上司だったらどうするかということを常に考えること。そうすれば自分がその立場になったときの準備ができていることになる。経営というとMBAのように専門的に経営を学ぶのを連想するが、では経営だけを専門に勉強して経営できるかというと、できない。その会社の風土があり、人が仕事するのだからまず人とコミュニケーションをとらなければならない。だからそういう経験が必要である。基本的知識は必要なら勉強しなければならないが学校に行って勉強しなくても自分で本を読んだり、立場立場で勉強すればよい。それから尊敬できる人を持って、例えばソニーの盛田さんやキヤノンの御手洗さんのような実際の社会で活躍されている方は非常に貴重な教材だと思う。そういう人達の考え方を勉強することは役に立つ。私はそういう考え方を取り入れてやってきたつもりである。
Q.やはりいろいろな人に会って話をするのは役に立つと思われますか?
A.自分に問題意識がないと聞いても勉強にならない。常に自分で目標とのギャップを埋めるためにはどうしたらいいかということを意識していれば、人に会うことによって自然に答えが出てくる場合がある。
Q.今の学生に対してどのようなイメージを持っていますか?
A.学生と接する機会が少なくて、あまり意見は言えないのだが、みなさんマイペースでやっているように感じる。それはそれでよいことだが、共同生活をしていくことが必要であるという自覚があればよいのでは。今の大学生は両親に守られて兄弟も少ないという中で恵まれているわけである。周りが助けてくれるという感じがあり、この点がマイペースさにつながっているように思う。会社に入ってもいろんな人がいて、戦前生れの人などはそうとう厳しい考え方をもっている方もいて、生きていく中で力強さ・打たれ強さというものを要求する。しかしながら今の若者はインターナショナルというかITなどで非常に情報量が多い。そういう面ではあまりこだわらずうまくやっているのではないか。
Q.私達学生は普段どういうことを意識すればよいでしょうか?
共同で仕事をするような経験をたくさんしたほうがよい。自分と違った人との接触をどうやっていくか、今後外国人との交流が増える中でそれがますます重要になると思う。そのために本を読んだり、自分で体験する機会をたくさん作ればよい。
Q.学生時代の本として読んでおいたら良いというのはありますか?
A.何でも興味を持った本を読めばよいと思う。私が薦めるのではなく、自分から興味を持ったものを幅広く読んでいって、その中で自分の参考になると思った著者を探して、その人をよく理解し、考えを身に付けるという読み方をすればよいのでは。私がここでこの本がいいですよ、という感じではなく、探していけばよい本を見つけられると思う。
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Q.小糸工業様では環境対策の大型設備を運営されていますが、これらの環境を重視した施設・設備等の研究は今後伸びていくと考えていらっしゃいますか?
A.当社は様々な事業を展開していて、伸びる分野と停滞している分野がある。新しいニーズがどのようなものであるかを考えながら、対応している。飛躍的な伸びはないが新しい進歩が積み重なることで新しい技術が生まれることは間違いない。その一つが環境分野である。会社自身が直接地球環境を守る活動というのはできないが、直接的に活動している研究者のための施設を開発するといった間接的な協力はできるのではないか。赤道から温帯・寒帯という幅広い環境を連続的に作り出し、その中で植物や動物がどのような行動をとるかということを研究することが地球環境の改善に役立つのではないかという研究がなされている。我々はそのような研究者に設備を提供するというスタンスをとっている。設備の仕様をどのようにするかが我々の仕事である。
Q.HPに掲載されている光無線LAN。これは画期的な技術だと思うのですが、今後どの程度の需要を見込んでいらっしゃいますか?
A.今までe-JAPANといっていたのがこの頃ではu‐JAPANのユビキタス化ということで、ますます通信系の事業は必要とされる。実際オフィスの中でも無線LANを使っている所もある。当社は屋外の信号機なり情報板なりの設置工事を行っていて、その中で開発されたこの技術をもっと一般に売っていこうと考えている。だからまだ現在は需要は多くはないが、今後はユビキタス化の中でもっと出てくるのではないか。今は限定的な使い方としては大学のキャンパスの内の校舎間での使用や、他にも一つの地域の中で全体をLANでつなごうという展望もある。ローカルな自前のLANというものが可能になる。電波というものは許可が必要であったり、微弱な場合には混信が起こることがあったりする。そういう意味で光の良さが出てくると思う。
Q.インフラ事業もなさっているわけですが、例えば自動車会社等とは異なる、インフラ系の会社の特徴などがございましたらお聞かせください。
A.車だと一年で変える人もいるが、インフラというものは相当長い期間使われるので信頼が最も大事である。技術や会社の方針変更で一年二年でなくなるような会社ではだめである。腰を据えるというか、お客様との信頼関係を築くことが一番大事。事業にはそれぞれ波がある。その波を乗り越えていくことが大事であり、当社の場合には単一の事業だけをやっているのではなく7つの事業を行っている。当社のキャッチフレーズが「安全と快適を求めて」であるが、どの分野においても安全と快適を求めて展開している。ある事業が停滞した時には他の事業でカバーしなければならない。停滞しているからもうやめてしまえとは言わず、なんとか我慢してカバーしてまたその分野が伸びるようになった時に対応できるようでなければならない。当社は大正4年から事業を行っているが事業のほとんどが生き残っていて、大枠では潰したものはほとんどない。インフラというものは事業全体を継続しなければならないものだと考えている。そして昔からの事業を継続しつつ新しい技術を取り入れていかなければならない。幅広い技術をいかに維持していくか、伸びている事業と停滞している事業とは、社内でもって力の入れ方の強弱をつけることで維持していくつもりである。
Q.最近では、2007年問題などが産業界に大きな影響を及ぼすとされていますが、御社もこの影響を受けますか?若手技術者の育成において工夫なさっていることなどがありましたら、お聞かせください。
A.団塊の世代などについて噂されているが、当社でも一度にたくさん入れた時もあり、その場合の懸念もあるが、私としては急に人を入れて増やしたり急に減らしたりという経営手法はとりたくない。だからできるだけ継続性というか、各年によって入る人の数は若干の幅はあるが0という年は絶対ないし、調整をしていきたいと考えている。当社の場合は現在のところ大きな問題は起きていない。2007年問題というのは国全体としてはあるかもしれないが、個々の会社にとってどの年が多くなっているかが多少異なるので会社によってずれはあるのではないか。専門的な技術を持っている方の退職ということについては早めに意識して引き継いでいこうとしている。
ノウハウの引継ぎについてはマニュアルと1対1で伝えていく方法と両方ある。マニュアル化できるものはした方がいい。これはその方が教えることの落ちがないというか、継続性もあるから。しかしながらマニュアルだけでよいかというとそうではなく実際にやってみるOJTと呼ばれるものと両方が必要である。
Q.投資家へのメッセージの一部に『経営方針の重点目標に掲げる“さらなる国際化”』と書かれていらっしゃいますが、やはり今後は中国だけでなくアジア圏全体を見据えた方向へとシフトされるのですか?
A.確かにアジアは需要が伸びるであろうし、まだまだこれから先進国が持っているものが使えるであろう。すると当然日本は近いのであるから、ヨーロッパ市場というよりもアジア市場のほうがやりやすいし有力な市場であるといえる。そこで何ができるのかというと、当社はいろいろやっているが世界で通用するものでなければ意味がない。そこで特に鉄道などは地球的レベルの仕事であり、当社の鉄道車両用電気機器は競争力がある。北米でも石油の高騰などの中で鉄道が見直されてきている。台湾の場合には日本の新幹線を導入したが、それにも当社の椅子や電気機器が入っている。中国もオリンピックやその後に向けて国内のインフラを整備しようということで鉄道の需要は増えると見ている。それにも対応していこうと考えている。東南アジアの場合には航空機が増えると考えている。
Q.今後一番力を入れていきたい分野はどの分野でしょうか?
A.会社は社会のためにあり、直接的にはお客様のためにある。お客様が必要とされるものを売っているわけだから時代時代のニーズによって、それは変わってくる。当面では航空関係と鉄道関係が力を入れていく分野である。その先は環境的分野。しかし、では公共分野は力を入れないのかというとそうではない。今、信号機もどんどん進化しているように技術の革新を行っていかなければならない。そして切磋琢磨し、お客様に必要とされる会社であるべく対応していきたい。
総括
今回の訪問では参考になるお話を聞かせていただいた上、工場見学等もさせていただきありがとうございました。多くの質問にも一つ一つ親切に答えていただきました。大学卒業後アメリカで就職なされたこと、置かれた立場において常にベストを尽くしその中で上を目指すという森様の考え方が特に印象に残っております。またインフラ系の事業を行うにあたって時代時代の波を超えて事業を継続させていこうというお考えも伝わってきました。























