2005年8月4日
EVENT.46 弁護士法人キャスト糸賀 東京事務所代表
瓜生健太郎氏インタビュー
お忙しい中お時間を割いていただき、インタビューをさせていだきました。

8月4日、SPECは六本木にある弁護士法人キャスト糸賀の東京事務所代表である弁護士、瓜生健太郎氏とお話させていただきました。
キャスト糸賀は法律、会計、税務のワンストップ・サービスを展開するキャストグループの一角で、国内はもちろん中国や韓国の案件を多数抱える、国際ビジネスに対応した総合的なリーガルサービスを提供しています。
URL: http://www.castlaw.com/index.html
瓜生氏略歴(上記HPから抜粋させていただきました)
1995 年 弁護士登録(東京弁護士会)・司法修習 47 期
1988 年 早稲田大学政治経済学部卒業
1992 年 司法試験合格
1993 年 司法修習生(〜 1995 年)
1995 年 常松簗瀬関根法律事務所(現長島大野常松法律事務所)入所
1996 年 松尾綜合法律事務所入所
1999 年 ソロモン・スミス・バーニー証券会社(現日興シティグループ証券会社)入社
2000 年 ベトナム司法省(日弁連より派遣)
2001 年 松尾綜合法律事務所入所
2002 年 弁護士法人キャスト設立
2005 年 弁護士法人キャスト糸賀参画
2005 年 キャスト・アドバイザリー・サービス株式会社設立
学生時代について
SPEC :はじめから弁護士になろうと思っていたんですか?
瓜生氏 :いえ、私は大学は早稲田大学でしたが学部は法学部ではなくて政治経済学部でした。受験で法学部も受かったのですが、法律っていうのは「校則」の親玉みたいなもんだから、そんなの勉強しても全然おもしろくないんじゃないか、と思っていたので法学部には行きませんでした。だからはじめから弁護士になろうとは全く思っていませんでした。
SPEC :どういった学生時代を送っていらしたのですか?
瓜生氏 :私たちの学生時代は、当時は本当にバブルだったんですよ。株や不動産が高騰して。日経平均が 4 万円行っていた時代なんですね。就職も学生の売り手市場だったので、銀行、商社、生保など雇用が大変多く、学生には天国みたいな時代だったんです。聞いたことあると思いますけど、囲い込みで温泉連れていったりとか、海外旅行連れていったとか、就職活動自体ほとんどないような感じで、面接受けに行ったら合格、みたいな感じだったんです。そういう状況だったから、学生の方も危機感は全くなく、レジャーランド化した大学で、スポーツとか、バンドとか、旅行とかやっていましたね。授業の方は、当然ですがほとんど出てなくて(笑)大学の先生の方も当時はあまりやる気がなかったみたいで、ちょっと試験受ければ「優」がきていた。ほんと、楽しかったね。
SPEC :そうすると、就職活動とか、企業に入ろうと思われた事もあったんですか?
瓜生氏 :普通に就職しようとも考えていました。でも私は当時もう少しモラトリアムを満喫したくて。
高校の時も、大学時代以上に遊んでいて、大学入って、ああ、もう少し勉強しとけばよかったかなぁ、なんて思ったりしてね。
私は受験の時に浪人して、私立専願で3教科に絞って勉強していたんですが、そのなかに世界史があってね。世界史って読んでいくと「ナポレオンってほんとにいたのか!?」とか、伝説だと思っていたことが実は歴史上でほんとに起こった事だったのを浪人してはじめて理解して(笑)そういうのってすごくおもしろいな、と思っていました。
だから大学入って、世界史で学んだ昔の哲学書とか経済に関する古書を読んだり、美術品を見たり、そういうことをしていたんです。大学の勉強なんてあんまりしなかったし、資格のための勉強なんかもしなかったけれど、そういう歴史上のすばらしい作品を見たり、読んだり、といった事に時間をかけていました。
文系の技術
SPEC :卒業してから弁護士を考えられたんですか?
瓜生氏 :そうですね。当時はさっきも行ったけどバブルで、友人の多くはすばらしい企業に就職が決まったりしていたけれども、回りの友人を見て、優秀なビジネスマンになりそうなやつが沢山いたんですね。それを見てこれはなかなか大変なんじゃないかと思いまして。それにもっとモラトリアムも満喫したかったし。
それから、当時のバブルは絶対続かないと思ってたんです。このままいくと先行きは危ないんじゃないかと感じていました。私の卒論も「バブルの研究」でしたし。金余りと資産の格差が広まったり、歴史を紐解いてみてもバブル前後にはいろいろ不均衡が起きてるんですね。それがなんとなく見えていたから危機意識を持っていて、でも回りの友人は皆就職しちゃって。
で、これからどうしようかと思って、まず自分は何をやるべきかと考えた時、いくつか選択肢を考えたんだけど、最初はマスコミとか考えていたね。でもそのうち、文系でもやっぱり技術が必要かな、と思いはじめたんです。
就職したら組織に入るわけだけど、その組織自体が安全かどうかわからないんだよね。どんな上司にあたるのかとか、そういう不明確なリスクを取りたくなかったから、そうすると技術が必要になってくるんですよ。じゃ文系で技術って何かな、って考えると、短絡的に資格しか思いつかなかったので、それじゃ法律の勉強でもしようか、と思って。
とりあえず今後の事は資格取ってから考えようと思って司法試験の勉強を開始したんです。
SPEC :弁護士になられた後はどういう分野の仕事に興味があったのですか?例えば今瓜生さんが手がけていらっしゃるM&A関連の案件とか・・・?
瓜生氏 :それも自分で何か戦略があって明確に動いた、というんじゃなくて、行き当たりばったりというか、ただそういう機会にめぐり合えてやっているという方が正しいね。
人には二種類のタイプがあって、戦略的にきっちりやるタイプとやらないタイプがいる。
やはり 10 年、 15 年経ってみると、戦略的にきっちりやっている人の方が着実に上手くいっている可能性が高いですよね。だから私のような戦略なき生きかたっていうのは、あんまりお勧めできないかな(笑)戦略は立てた方がいいよ。
ただ戦略がないなら、それを無理やり立てるのは良くないね。戦略なき人はないなりに、ないまま生きていくのが良い。まあ上手くいくっていうことは、何を持って上手くいったと言えるのか難しいけれど、いろんな人を見た時「この人はすごいな」と思える人は、それなりに戦略を立てて生きているよね。私の場合は戦略がないほうで、結果的には「戦略がないという戦略」を徹底していた結果、上手くいったとか上手くいかなかったとか関係なく、まあ「笑える」かな、と思っています。まだ人生総括する段階ではないので、まあなんとも言えませんがね。
弁護士になった後は修行しなくてはならないのですが、その後は、ビジネスローやる人は留学したりロースクールに通ったりするのですが、私はまた勉強生活に戻るのは嫌だった。ビジネスの最前線をやってみたかったからソロモンに行って。その後は、その当時たまたま募集していたベトナム行きに立候補したんです。これも戦略的にやったわけでもなんでもないんだけれど、ベトナムでの経験、例えば、外交とか役所の仕事とかを学べた事や、 ODA 支援業務、社会主義、途上国での活動、ソロモンでの投資銀行業務の経験は本当に今にいきているよ。
M&Aについて
SPEC :M&A関連の案件を扱う弁護士の数、規模はどのくらいになっているんですか?
瓜生氏 :やはりそこそこプロといえるレベルの人 4、50 人はいるでしょうね。これからどんどん増えてくると思うよ。それから案件が増えれば、当然それに対応できる人は増えていくよね。程度の差はあれ、一定レベルの人であればこなせる仕事だから、もちろん本当にレベルの高いM&Aのプロの弁護士さんもいて、そのレベルまで達するのはなかなか難しいけれど、そこそこ案件をこなせる人は増えてくるでしょう。
SPEC :投資銀行の業務との違いを教えてください。
瓜生氏:法律事務所はリーガル面でのM&Aをやるんですよ。通常は、主にストラクチャーの構築、法務デューデリジェンス、契約書作成業務が中心だね。実は顧客が望むプロフェッショナルサービスは、企業評価、タックスプランニング、財務デューデリジェンス業務もある。会計士と弁護士がタッグを組んで、全体的なトータル面で財務アドバイザーもして、ストラクチャーもして、タックスプランニングもして、って感じで。でもそういう事務所は比較的少ないよね。一般に法律事務所は法律だけ、会計事務所は会計だけ、みたいな所が多いんだけど、うちはそうじゃない。うちの強みは弁護士、会計士両方揃っている事。お客様の側から見ればすごく便利だと思うよ。さっき言った事が全部出来る事務所だからね。
また、 I.B (投資銀行)だけのM&Aを見ると、トータルな業務を見据えながらディールのディベロップメントもやっている。彼らは案件を見つけて、こういうM&Aをしたらどうですか、みたいに働きかけたり、現金が多すぎるからM&Aしましょうよ、みたいな財務アドバイザー的仕事からやっていく。その上で案件が進んでいくと彼らは一番最初の元請け的な仕事ができる。その元請けをして、最終的にバリュエーションとか、ストラクチャーを行い、契約を作る段階になって初めて我々にリーガル面を外注してくる。全体を取り仕切って上手くまとめるのが彼らの主な仕事ですね。
そういう意味で弁護士とか会計士はベンダー(下請け業者)だよね。最近は案件も難解になってきて、リーガルチックな問題が、例えば敵対的買収なんかいい例だよね。そういうのが沢山出てきているんです。そういう時にM&A案件に対応できる弁護士、会計士が必要になってきます。だから今後絶対M&Aに対応できる弁護士は増えていくね。
あと投資銀行業務は証券会社がやっているところが多いけれど、資本市場においてM&Aの結果IR的にその会社はどう評価されるのかを予測するなど、資本市場との対話の部分はやっぱり投資銀行にしか出来ないよね。その辺も彼らの強みかな。
SPEC :今後どういった分野でM&Aが活発になっていくのか教えてください。
瓜生氏 :あらゆる分野で増えてくると思います。まず今の多くの企業は過剰流動性でキャッシュが多いからM&Aをした方がいいし、それにまだ表には出ていないけれど、痛んでいる会社が沢山あるんですね。日本のきわめて大きな会社の中でも、大企業同士の間に大きな差が出てきているんです。昔銀行がいっぱいあったでしょ。今減っていますよね。日本は今ちょっと、大企業の数が多いね。
SPEC :敵対的買収を日本企業は使うべきですか?
瓜生氏 :やっぱり敵対的買収っていうのは、私はあまりお勧めしません。すごいコストかかるし。敵対的買収をしない形で、どうやって買収するのかっていうのが本当の腕の見せ所ではないですか。
本当にいい合併をしようと思ったら、やっぱりマネジメントレベルでしっかりお互いが理解して案件を勧めていかないとうまくいかないリスクが高まるし、コストも多くかかるからね。一番大事なのは合併後で、権力争いもなく、ビジョンを共有できて、信頼関係をマネジメントレベルで作っていく事ですね。
SPEC :M&Aの本質って、なんですか?
瓜生氏 : 市場メカニズムによる会社の生生流転かな。
全ては顧客のために
SPEC :弁護士になってよかった事って何ですか?
瓜生氏 :一つ核となるよりどころがあるというのは感じるね。
私は弁護士ですが、もっと幅広い、コンサルであるとかカウンセリングというものをやりたい。そういう人間になりたいんです。総合的にアドバイス出来たらいいかなと考えています。弁護士というのは法律に従って判断するのが基本で、法律上の判断だけするべきだっていう人が、すごく立派な弁護士さんだと思うんです。
でも私は、お客様から法律上以外の判断を求められたら、法律を基礎としていても自分の経験に基づいて、その場その場で適切なアドバイスをし、最後はお客様に判断してもらいたいですね。こういう助言を求められる立場の仕事というのは、非常にやりがいがありますし、弁護士になってよかったと思える事でもあります。
*このログは合田が担当しました。全ての責任は合田にあります。
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